パターを15本ほど持ち歩く青木瀬令奈は2週前にオデッセイの新作に一目ぼれ(撮影:ALBA)
青木瀬令奈のコーチ兼キャディを務める大西翔太が、好調な選手や注目選手の強さのヒミツを解説、女子ツアーでの流行など現場からのホットな情報をお届けする。今回は女子プロが試合によってパターを替える理由を聞いた。
【写真】青木瀬令奈が一目惚れしたオデッセイの新作『TRTL』
◇ 「リゾートトラストレディス」で今季2勝目を挙げた河本結。普段使うエースパターとヘッドは同じモデルだが、ロフト角3.5度のモノから4度に微調整したヘッドを投入していた。これは気分転換ではなく「グリーンの芝が長かったので、球がヨレないように4度にしました」と、グリーンの状態に合わせて変更していた。 最近よく聞くのが、同じヘッド形状でフェース面の削りやインサートを変えて、打感や音、転がりの違いを出す2本を用意してグリーンの速さによって替える。同じ振り感で転がる距離をコントロールするという狙いだ。 試合によってパターを替える選手は少なくないのだが、それについて大西コーチが解説する。「大会や天候によってグリーンの速さや芝の長さ、湿度などのコンディションが変わります。フェースのインサートやロフト、長さ、重さと特性の違うパターに替えるだけで、ストロークの感覚を大きく変えずに、タッチを合わせやすくなります。もちろん同じパターを使い続ける良さもありますが、道具を替えるメリットは大きいです」。 例えば、普段速いグリーンでプレーしていて、急に遅いグリーンになるとパンチが入りやすくなる。同じ振り感でもイメージどおりにボールを転がすためにインサートを変えたり、重量の違うモノを投入する。また、数ミリほど芝が長いだけでもボールが沈むため、ロフトが寝た方がいいなどの違いもあるという。毎週コンディションが変わるツアーでの対応策といえる。 パターを替える代表的な選手はパットの名手・青木瀬令奈だ。「15本ぐらい持ち歩いています」(青木)と、0.5度刻みのロフト違いやライ角違い、インサートや重量違いなどがあり、その週、その日に合わせてパターを選んでいる。 2戦前の「ブリヂストンレディス」でも、グリーンの状態をチェックして「慣性モーメントが大きいパターがいい」と判断して、オデッセイの未発表モデルで小ぶりなマレットの『TRTL(タートル)』を即投入。今季のバリエーションの1本になった。
青木がパターを替える理由は、グリーンの状態だけではない。同じモデルでも33インチ、34インチと長さが違うモノも用意している。「33インチを使い続けているとハンドダウンになって上から押さえつけるようになり、力みにつながります。テークバックもアウトサイドに上がりやすくなります。そういうときに34インチのパターに替えます。長いぶん、吊るイメージで構えられるので、上体が起きたアドレスになります。軌道もイン・トゥ・インで振れるようになります」。 連戦しているとスイングだけでなく、パッティングのストロークにも微妙な差が出てくる。パターを替えることで構えやストロークを修正する狙いもあるという。 大西コーチはアマチュアにも複数本のパターを推奨する。「ドライバーやアイアンよりも、パターを替えた方がその変化を大きく感じられます。アマチュアの方も形状の違うパターを2本持っておくと、グリーンコンディションが大きく変わるグリーンでも、自身のイメージや感覚を変えずに対応できるようになると思います」。 さすがに15本とまではいかないが、「エースがマレット型ならブレード型をサブに。ブレード型がエースならマレットをサブと、真逆のパターを用意するのがオススメです」とまずは2本体制からが良さそうだ。一般的にマレット型は直進安定性に優れた形状。ブレード型は感性を生かしやすい。直進安定性に頼りすぎるとつかまえる動作を忘れがち。逆に感性を生かしすぎると、ストレートにヘッドを動かす感覚が鈍くなることもある。「真逆のパターを使うと、それぞれの良さをより発揮できたり、感性を育成することにもつながります」。プロほど連戦するわけではないが、道具を替えることでフレッシュな感覚で臨めるのも、スコアアップにつながりそうだ。 ■解説・大西翔太(おおにし・しょうた)/1992年6月20日生まれ。名門・水城高校ゴルフ部出身。2015年より青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務め、24年からは安田祐香のコーチングも行っている。16年にはキャディを務める傍らPGAティーチングプロ会員の資格を取得した。ゴルフをメジャースポーツにと日夜情熱を燃やしている。プロゴルファーの大西葵は実の妹。YouTube『大西翔太GOLF TV』も好評で、著書『軽く振ってきれいに飛ばす!! 飛距離アップの正解』が発売中。大西翔太プロデュースの練習器具「Sho_izm(ショーイズム)」シリーズ(朝日ゴルフより全国のゴルフショップにて販売中。豊富な知識を生かして、今年はテレビ解説も行うなど活躍の場を広げている。