ブリッヂ・マレットが今後のツアートレンドを牽引する!?
直近の世界ランクトップ20のうち、ブレード型1人に対してマレット型は19人と、近年ツアーで支持を集めているマレットパター。トレンドを牽引するテーラーメイド『Spider』シリーズが19人中7人で、6人がスコッティ・キャメロンの『PHANTOM』シリーズを使用している。
【画像】あなたのマレットの好みは「ブリッヂ型」? それとも「トップライン型」?
元々オデッセイでマレット型の数多くの名器を生み出し、数年前からスコッティ・キャメロンの右腕として参画するオースティ・ローリンソン氏が先日来日し、マレット開発の裏話を聞くことができた。彼とスコッティが「ツアーの今のトレンド」を形にしたのが、新形状の『PHANTOM 12』と『PHANTOM 3.2』だ。
ルドビグ・オーバーグ(3.2)やライアン・ジェラルド(3)、ハナ・グリーン(3)らが移行したコンパクトな『3』や、変形六角マレットの一種と呼べる『12』が生まれた理由は何なのか?ツアー選手のシビアな要求をどう機能へと落とし込んだのか、開発経緯の一端をオースティが明かす。 ■ スコッティが当初「気に入らない」と一蹴した『3.2』 『PHANTOM 3.2』のベースとなったのは、ツアーでも根強い人気を誇るミッドマレットの『GOLO』だった。オースティは「新しいミッドマレットの形状を作りたい」と開発をスタートしたが、凹んだGOLOとは逆に、その盛り上がった長いサイトラインの設計には並々ならぬこだわりがあったという。
「フェースからバック部にかけて、長くて真っすぐなサイトラインを入れるために、中央部分が“ブリッヂ”のように盛り上がるクラウン形状(Tシェイプ)を考えました。でも、最初に丸いプロトタイプをスコッティに見せたとき、彼はそれを見て『気に入らない。なんだか古く見えるよ』と言ったのです」
鶴の一言から大幅な見直しが始まり、オースティはスコッティが気に入っていた過去の名器や近年のPHANTOMシリーズが持つ角張った形状を融合させることを決意。さらに、ツアーで大ヒットしていた『PHANTOM 9』のクラウン形状からも着想を得て、現在のシャープさと丸さの融合したデザインへと洗練させていった。 ■左右の“狙い”だけでなく、ブリッヂで“高さ”感覚も磨ける 結果、フェースはかつての『Red X』のように丸みがあり、フェース高さも増す形にしたオースティ。さらに“ブリッヂ”と呼ぶ、盛り上がった部分でボールを打ち抜くイメージをアライメント効果と共に設計。コレは既存の『9』や『11』に続き、新形状『3&12』も同様だが、なぜ今“ブリッヂ・マレット”が必要なのか。
「アマチュアゴルファーの多くは、フェースに高さがある方がより安心感が持てて助けになるうえ、ブリッヂ型の盛り上がった形状は高さをしっかりと感じ取ることにも役立ちます。かたや、ツアープロのフェース高さの好みは昔からディープとシャローで半々なため、全員を満足させるのは難しいもの。ですが、今回はややディープ寄りに設計しました。 当初、スコッティは『9』と『11』を【ブリッヂにしたい】とは言っていたのですが、結果『3』も『12』も一種のコラボのような形で進めた結果ブリッヂ型になりました。ツアーニーズを考えると、『5』や『7』のようにブリッヂではない見慣れた縦のトップラインを好む選手も大勢いる一方で、『9』『11』のように横のブリッヂを好む選手もいる。その両方のタイプを用意したかったのです」
一方、直近のコーンフェリーツアーやPGAツアーの若手選手で急激にスイッチが加速し、以前リディア・コが使って話題になったのが『PHANTOM 12』だ。コレもかつての名器から着想を得て現代に蘇らせたという。 ■ 『PHANTOM 12』は若手選手にスイッチが加速 「このデザインは、スコッティの過去の名器『フューチュラ』から多くの着想を得ています。前方にアルミニウム、後方にスチールを配し、背面にリングウェイトを搭載する手法です。ヘッドに施された長めのスリットは、かつての大型マレット『コンビ』から着想を得ました。重量を削減してMOIを高めるだけでなく、アライメントを高める役割も兼ね備えています」
と、『12』は前述のブリッヂ形状もより長くて特徴的。『3』と比べるとツアー選手の活躍が少なく感じる理由は、複数パーツを合わせる製造上の難点を背景に供給を絞ったことにあるとか。以前の『12』に比べてウィングを小さく、やや小ぶりにした理由もこう話す。
「この設計にした最大の理由が重心深さにあり、深くしすぎないことが重要です。深くしすぎるとパターの慣性やミスヒットへの寛容性に悪影響を及ぼす(挙動が変わりすぎる)ことがあるからです。そのため、投影面積を以前の『12』より抑えつつ絶妙なバランスを追求しました。『11』も最も重心が深いモデルの一つでしたが、今回の『12』はそれよりもやや深くなっています」 ■軽いブリッヂだから『12』を低重心化できた 以前の大型の『12』はツアープロの使用事例がほぼ見られなかったが、現代のプロが好むサイズ感へと調整を重ね、重いステンレスパーツを地面に近い低い位置にして、宙に浮いたブリッヂ部分は軽いため「低・深重心化」にも成功。転がりの向上を突き詰めて生まれ変わらせたのが、今回の『12』だという。
「前方に軽いアルミを打感に配慮して分厚くし、後方に重いスチールを配したことで、重心をより深く、低くすることに成功しました。これによって、ストロークの最下点を過ぎて、アッパーブローでボールを捉えやすくなり、ボールの順回転も手助けしてくれる仕上がりが特徴ですね」 ボールを打ち抜く“高さ”の感覚と、左右のアライメントが立体的に浮き上がって見える、最新デザイン哲学から生み出された、スコッティ×オースティの“ブリッヂ・マレット”。トップライン型の『5』や『7』や『GOLO』ユーザーだとしても、最新のブリッヂタイプ(3,9,11,12)は手にしておきたいものだ。