ウィンダム・クラークが大会2勝目の舞台裏を語った(撮影:GettyImages)
<全米オープン 最終日◇21日◇シネコック・ヒルズGC(ニューヨーク州)◇7440ヤード・パー70>世界一過酷といわれる大会で完全優勝を果たしたウィンダム・クラーク(米国)が、高々と優勝をトロフィーをかかげた。2023年以来となる大会2勝目。満面の笑みを浮かべたが、この日は特に“過酷”な一日だったに違いない。
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初日から首位を明け渡すことなく、最後まで走り切った。3日目を終えて2位グループに6打差をつけた。最終ラウンドは自身がスコアを落とすなか、サム・バーンズ(米国)の猛烈な追い上げを受けたが、なんとか1打差で逃げ切った。そんなラウンド途中、ファンからは心無いヤジが飛んだ。ニューヨークのファンは全米のなかでも際立つ過激さで知られるが、それだけが理由ではない。ヤジを超えた暴言ともとれる辛辣な言葉が、クラークに浴びせかけられた。「ニューヨークのファンは僕に勝ってほしくなかったんだろうね。いいショットにブーイング、悪いショットには(喜びの)声援。メジャーでは珍しいことだよね。でもそれは自業自得だと思っている。自分に責任がある」米国人にとってはもっとも権威ある大会で“やらかしてしまった”のが昨年大会。1打およばず予選落ちを喫し、たまったフラストレーションのあまりクラブハウス内のロッカーを破壊。歴代チャンピオンのこの振舞いには批判が殺到し、会場となったペンシルベニア州の名門・オークモントCCから“出禁”を言い渡されたという過去がある。その後も救済を受けるかどうかで競技委員と議論になりプレーの進行を遅らせてしまう事態を起こすなど、ファンのあいだではすっかり“ヒール”ぶりが定着している。少なくともニューヨークのファンにとっては、大会2勝目を狙うクラークは悪役だった。最終日最終組を同組で回ったスコッティ・シェフラー(米国)のキャリアグランドスラムへの期待も相まって、「タフだった」という一日はクラークの気持ちを削っていった。17番を終えて、先に上がっていたバーンズとの差は1ストローク。パーで上がれば優勝という18番でティショットをラフに打ち込んだが、なんとかパーオンに成功。およそ15メートルのファーストパットを20センチに寄せて逃げ切って見せた。「最後まで戦い抜けた。もっと差をつけられれば良かったけど、勝てたからそれでよし」と安どの表情を浮かべる。勝ったことに加え、完全アウェイの空気に打ち勝った自分を褒める。「ライダーカップやプレジデンツカップを敵地で戦う時のようだった。ネガティブなことがほとんどだった(笑)。だけど、『あそこに一人だけ僕のファンがいるよ』と冗談を言ったりして、ポジティブな気持ちに変えることができた」。勝利への欲とともに、実はある思いも秘めていた。今大会はクラーク曰く『redemption』の場。直訳すれば贖罪(しょくざい)だ。昨年大会での事件が招いた評判はなかなか拭えるものではない。それでも懸命に優勝を目指したこの日のプレーは、ゴルフファンや関係者、そして怒りに任せた行為を反省する自分自身への罪滅ぼし。「勝てたことを誇りに思う」。しみじみと喜びをかみしめる姿が印象的だった。