菅楓華はスリクソンの未発表モデルを投入したタイミングでロフト角を9度から10.5度に変更した(撮影:ALBA)
この夏は過去イチの飛距離を手に入れたい! アマチュアの永遠の願いを叶えるべく、ALBAでは『飛ばしフェス』を開催中。ツアーの現場から、女子プロの使用ドライバーを徹底調査し、飛距離アップのコツをギアの面から探った。今回はロフト角に注目。ドライバーといえばロフト角は「一桁」と考えている人は、再考の余地はあるかもしれない。
【写真】10.5度で安心感が出る菅楓華のドライバーの顔
◇ ■菅楓華は新モデル投入で9度→10.5度にチェンジ 現在、メルセデス・ランキング3位と年間女王争いを演じる菅楓華。「資生堂・JALレディス」からスリクソンの未発表ドライバー『ZXi RKT TR』を投入した。「5ヤードぐらい飛ぶようになりました」と語るように、新しいテクノロジーによって初速が上がり、飛距離が伸びたという。やはり新しいクラブは飛ぶのだろう…そう思いながらスペックを見ていて、ふと気がついたのがロフト角だった。以前使用していたモデルはロフト角9度だったが、新モデルは10.5度に変わっていたのだ。 「ロフトがあった方が、安心感があります。やさしくつかまるし、(ボールが)右に逃げない。打った時のデータもよかったんです。高打ち出し・低スピンで飛ばしています」と菅は説明してくれた。最新のヘッドがロースピン設計だからこそ、ハイロフトに変えたともいえる。 今年の優勝者を見ると、5年ぶり復活Vを遂げた笠りつ子(キャロウェイ『パラダイム???』)や、ウー・チャイェン(台湾、キャロウェイ『エリート』)、ルーキー初優勝一番乗りを決めた倉林紅(ヨネックス『EZONE GT』)が、ドライバーのロフト角10.5度を選んでいた。ほかにも安田祐香(スリクソン『ZXi』)や政田夢乃(キャロウェイ『クアンタム???』)、川﨑春花(テーラーメイド『SIMグローレ』)も10.5度を愛用している。
■通算2勝の岡山絵里は“やさしいスペック”で10ヤード以上飛距離を取り戻した また、今年30歳を迎えた通算2勝の岡山絵里は、「少し前からやさしいクラブを使うようにしています」と話す。昨年からピンの『G440 MAX』のロフト角10.5度を使用し、シャフトはバシレウス『ZⅢ』の40グラム台のXを挿している。ハイロフトに加えてクラブの軽量化でやさしさを求めている。 「ロフトが寝ている方が操作しやすいんです。ロフトが立っていると滑ってしまうので。少しつかまりつつ、ちゃんと自分で操作したいんです」。適度につかまり、適度なスピン量が入るロフトを選ぶことで、コントロール性と飛距離性能の両立を追求している。 岡山は2017年のドライビングディスタンス244.66ヤードを記録するなど、平均240ヤード超えが当たり前だったが、シード権を手放した22年は234.57ヤードに。出場11試合にとどまった23年は231.64ヤードと大きく落ち込んだ。クラブやスイングなどを見直した24年には245.16ヤード、25年は240.82ヤードと飛距離を取り戻し、見事シード権も復活した。 さらに昨年、8度目の挑戦でプロテストに合格した鳴川愛里は、今まで無頓着だったクラブを見直して、悲願を達成した一人だ。ドライバーはピンの『G440 MAX』でロフト角はなんと12度を選んだ。「ドローボールを打つ時にフェースを立てて当てるのですが、12度にしたらちょうどいい高さになりました」と理想の高さが打てるロフト角を選んだ結果だという。 女子プロも9度などの一桁ロフトを使う印象が強かったが、10度を超える選手も増えているのが現状だ。
■スイングの変化とギアの進化が大きく関係している このトレンドについて、ギアに詳しいティーチングプロのQPこと関雅史氏が解説する。「ひと昔前の女子プロはアッパーブローの度合いが強く、下からカチ上げてドローボールを打つ選手が多かったです。そのため、インパクトロフトが寝るので、もともと立ったロフトを好んでいました。それが、最近はアッパーの度合いを抑えたり、レベルブローに近い打ち方に変わってきています。そうしたスイングでロフトが立ちすぎていると、球が上がらないため、10度以上が増えたと考えられます」。ボールを上からつぶす動きの方がコントロール性は高く、ボール初速も上がる。全体的なスイングの考え方の変化が影響しているという。 また、クラブやボールの進化も大きく関係しているといい、「大きく2つの理由が考えられます」とも付け加えた。 まず1つは『低スピン化』だ。「ドライバーはスピン量が少ない方がいい数値が出ます。最近は重心が深いドライバーでもスピン量が減らせるようになってきています。また、ボールの進化も目覚ましく、ドライバーショットでの低スピン化が進んでいます。スピン量が少なすぎるとドロップしたり、つかまりきらなかったりするので、ロフト角を寝かせてスピンを調整していると思います」 そしてもう1つは、『ミスヒットに強いドライバー性能』だ。「ピンが大成功したように、多くのメーカーがヘッドの重心を深くして慣性モーメントを高めてミスに強いヘッドを出しています。重心が深いと、ダウンスイングでヘッドのお尻側が落ちてロフトが寝やすくなります。そうすると感覚の鋭いプロは、『上から入れた方が飛ばせる』と感じるものです。しかし、上からクラブを入れる打ち方で、ロフトが立っているとボールが上がりにくい。9度よりも10度以上を好む選手も増えてきていると考えられます。『MAX』と呼ばれるモデルは総じて重心が深く設計されていますから、これも時代の潮流ですね」 飛距離には打ち出し角とスピン量が大きく関係する。ギアの進化に合わせて、当然ながら道具選びも変わってくる。菅のように高打ち出し・低スピンの理想的な飛ばし方を実現したい人や、岡山のようにラクにボールをつかまえたいという人は、ロフト角を見直すだけで飛距離を伸ばせる可能性は十分にありそうだ。 ■解説・関雅史 せき・まさし/QPさんの愛称でおなじみのティーチングプロ。最新のクラブ性能に詳しく、ギアの性能をいかすスイング指導も高く評価されている。自身のスタジオ「ゴルフフィールズ」でのフィッティングとレッスンは予約が取りづらいほど大人気