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メジャー優勝を手繰り寄せた“窮地からの一打” 桑木志帆が酔った「人生で一番美味しい」勝利の美酒

2026/08/03 08:26

桑木志帆が全英制覇 このトロフィーは手放しません!(撮影:ALBA)

<AIG女子オープン 最終日◇2日◇ロイヤルリザム&セントアンズGC(イングランド)◇6601ヤード・パー71>“絶対絶命”のなか放った一打が、メジャー優勝を手繰り寄せる一打になった。トータル5アンダーで並んだエスター・ヘンセライト(ドイツ)とのプレーオフ1ホール目のティショット。「一番自信があった」というドライバーショットが乱れた。 【写真】祝全英制覇! ビールで乾杯! 「体が固まってしまった」。最終組の2組前にホールアウトし戦況を見守っていた時間もあり、そうなっても不思議ではない状況。しかも落ちたところはポットバンカーすぐ後方の傾斜地で、ボールは草に埋もれていた。「やっちゃったな」。それがライを見た時の素直な感想だ。だが、小田亨キャディからかけられた言葉が、冷静さを取り戻させてくれた。『3打目を寄せられたら相手にプレッシャーをかけられるから、とりあえずフェアウェイに出そう』。無事、ボールはフェアウェイへ。そして残り108ヤードから48度のウェッジで打った3打目が、1メートルにつき、パーをセーブ。それが重圧になったようにヘンセライトは、4メートルのバーディパットを外し、勝負は2ホール目に持ち越された。そもそもプレーオフ突入自体、“まさか”の展開だった。ヘンセライトは、バーディが必須だった正規の18番で15メートル以上はあろうかというパットを決めて、延長戦にもつれ込んだ。それでも桑木本人は冷静。「ホールアウトした時にプレーオフになると思っていたので。すごいパットが入ったなとしか思わなかった」というのだから、その肝っ玉に驚かされる。日本ツアーでは2023年の「資生堂レディス」、25年の「ソニー日本女子プロ選手権」とプレーオフは2戦2敗。しかし、初勝利を、この大舞台で挙げた。「まじかとは思ったんですけど、ここで勝ち切れるのは成長を感じる。これまでは緊張感もありましたし、ちょっと(集中が)切れていたかな」。このリンクスでは、そんな姿はみじんも感じさせなかった。プレーオフ2ホール目。こんどはヘンセライトが右のブッシュにつかまりボギーを叩いた。桑木はその姿を見てから、最後1メートルもないウイニングパットを流し込んだ。最初は帽子のつばに手をやり歓声に応え、その後、両手を広げて喜びを表現。すると、すぐに他の日本選手が駆け寄り「夢だった」という祝福のシャンパンシャワーを浴びた。「温かかったですね」。幸せに包まれた時間だ。この勝利に涙はなかった。これには本人も「なんか自分でもびっくりしました」と言って笑う。「あきちい(岩井明愛、千怜)が来てくれた時に、千怜がなんかもう泣き始めちゃって。それを見て、ちょっとうるっとはしました。こんなによろこんでくれてうれしいなって」。ただ一番は、それほど実感が湧かない勝利でもあった。3日目終了時に「緊張はしなかった」と話していた桑木も、プレーオフ1ホール目のパーパットを打つ時は「手が震えていた」ことを明かす。ラウンドを通して感じられた冷静さだったが、やはり極限のシーンでは重圧を抑え込むことはできなかった。それがメジャーの価値でもある。日本女子7人目のメジャー優勝者が誕生した。表彰式が終わると、記念撮影や挨拶回りなど、勝者の仕事が続き、落ち着いたのはすっかり日も暮れた午後11時頃になっていた。優勝会見では、海外記者に『優勝のお祝いは何をする?』と聞かれると、「お酒が好きなので、いっぱい飲みたいと思います」と答えて会場に笑いと拍手を起こしたが、大仕事を終えクラブハウスに戻ると、チームのメンバーとビールで乾杯。勢いよくゴクゴク飲むと、目を見開き「人生で一番美味しい」と言って、最高の笑顔を浮かべた。この優勝で得た権利を行使し、来年から米国ツアーに参戦することも決めた。「この優勝がたまたまだと思われないように。これで満足するのではなく、まだまだ強くなりたいので地道に練習を頑張ります」。ここが始まりだ。「メジャー優勝でフワフワしてるんですけど、他のメジャーでも優勝争いにどんどん絡んで優勝できるように頑張ります」。ただ、今は正真正銘の“勝利の美酒”を堪能するのが先だ。(文・間宮輝憲)