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ゴルフで地元に活力を! プロゴルファーから実業家に転身、岩手県オープンの仕掛人が抱く“地域貢献”への想い【深堀圭一郎×金谷嶺孝氏・対談】

2026/08/23 09:00

金谷嶺孝氏(左)と深堀圭一郎は明治大学時代からの付き合いだ(撮影:ALBA)

8月8日に行われた男子プロ、シニアプロ、女子プロ、アマチュアの4つのクラスが1つの試合になった東北最大のゴルフイベントとして知られるツアー外競技「岩手県オープン」は、今年が24回目の開催と、着々とその歴史を刻んでいる。その大会でプロデューサーを務める株式会社バーグル代表取締役の金谷嶺孝氏は、プロゴルファーとして競技の道を歩んだ後、複数の事業を手掛ける経営者へと転身した人物だ。 【写真】大会は大盛り上がり ギャラリーの応援がすごい! 30歳で競技生活に一区切りをつけ、現在は岩手県内のゴルフ場などを経営。「一人でも多く、アマチュアゴルファー、ジュニアゴルファーを増やしたい」という思いを胸に、地元・岩手のゴルフ界を盛り上げている。そんな金谷氏が、明治大学時代の先輩であり、国内男子ツアー通算8勝を挙げている深堀圭一郎と対談。互いの歩みを振り返りながら、プロゴルファーのセカンドキャリア、そしてゴルフを通じた地域貢献について語り合った。(取材/編集・高木彩音) ◇ 中学時代の全国大会には、深堀のほか、伊澤利光、川岸良兼、同学年には丸山茂樹といった実力のある選手が勢ぞろいしていた。そうした環境のなかで、「ゴルフがうまくなりたいなら関東に行かなければいけない」と感じた金谷氏は、地元の岩手県・盛岡市を離れ、埼玉県の高校へ。その後、明治大学へ進学した。その理由の一つにあったのが、「憧れている深堀さんの存在」だった。30歳で一度競技から離れ、ビジネスの世界へ。現在は、岩手県オープンが開催されたきたかみカントリークラブなどを経営する実業家として忙しい日々を送っている。一方、深堀は国内シニアツアーで活躍しながら、レギュラーツアーの解説なども行うなど、ゴルフ界で幅広く活動中。道は分かれたものの、敬意を払い合う2人が、これまでの歩みを振り返った。■道は分かれたが、互いを尊敬し合う存在【金谷】(以下、金):深掘さんの大学時代の印象は、もう本当にスーパースターという感じでした。【深堀】(以下、深):いやいや…。(ほほ笑む)【金】:本人は謙遜するんですけど、僕らから見たらずっと背中を追いかける存在で、僕が先輩を追い越したことは一度もありませんでした。顔を見るよりも背中を見ている時間のほうが長かったくらい、ずっと追い続けてきました。「ああいう選手になりたい」と思いながら、ここまでやってきました。【深】:たぶん、そのときの金谷に比べて今の金谷は想像もできないくらい大人。経営者になり、成功者というよりも、目標に向かって頑張っていて、その姿勢は、すごく誇らしい。【金】:先輩は技術的な師匠というよりも、精神的な師匠であり、人生の師匠。いまの自分があるのは、先輩であり師匠のおかげです。【深】:いやいや、(金谷氏は)大社長ですから。 (編集部:昔の金谷さんはどのような方なのでしょうか?)【深】:高校3年から大学1年に上がるときに、OB会かなにかがあって、そのときに金谷が紹介されるシーンがあったんです。そこで初めて名前、顔、その存在を知って『おお!』と思いました。もうね、今の金谷を知ってる人からすると、ひっくり返るぐらいのやんちゃさ(笑)。【金】:周りの環境ってあるじゃないですか。僕が行った高校は、けっこうやんちゃな方がいて、それが普通だったんです。【深】:でも“やんちゃ心”っていうのは、何かを達成するためにすごく大事なことだと思う。好奇心や、行動力がある。それをエネルギーに変えていけばいい。実際、今そこに向かっていることはすごいこと。【金】:ありがとうございます。【深】:いろいろな道に進む人はいるけれど、あそこ(30歳でビジネスの道へ)で1つの決断をして、自分の新しい道に1歩踏み出して、それを必死にやっている。大事なところがきっちりしていて、人に任せてなんとなく経営しているのではない。他のことをしっかりやりきりながらやる、そんな人ですね。 ■30歳で転身 ゴルフで岩手県を元気に【深】:プレーヤーとして生計を立て続けるというのは、本当に大変なことなんです。だらだら長く続けるのであれば、腹を括らないといけない。プロとして賞金を稼ぐのはもちろんですが、それに加えてティーチングをしたり、ゴルフ場のなかで何かをして生計を立てることもある。そうしたなかで、金谷は岩手県という地元を背負い、何か恩返しをしたいという想いがずっとあったんだろうね。【金】はい。当初はいろいろな声もありましたし、意見をいただくこともありました。でも、人を喜ばすには、とにかく量をこなせば、質が生まれてくる。そうした考えが少しずつ応援に変わっていき、今ではこの大会自体が地域に定着し、「応援するのが当たり前」という空気もできています。それは本当にありがたいことだと感じています。 【深】:ある程度の年齢で一区切りをつけ、次の道に進むという決断をしたのは、本当にすごいことだと思う。(競技を)引退はしていないけど、1つ線を引いて次のステップに進むことは、すごく大変なことですから。【金】:スポンサーを集めるにしても、金額の大小に関わらず、一社一社に頭を下げて誠意を伝え続けることで信頼関係が生まれてきました。また、活動を続けていけば評価される一方で、時には嫉妬も生まれる。そうしたなかでも、他人の常識より、自分の価値観にしたがって行動していくことで、よき理解者や応援者が増えてくれました。【深】:自分が上手くなりたい、極端に言えばお金を稼ぎたい、強くなりたい、有名になりたい、モテたい…そういう気持ちを一度断ち切り、裏方になって、経営者としていろいろなことをやりながら、こっちではゴルフのスポーツ少年団を作ったり。トッププロを呼び、地域の人たちにゴルフを見せたり。そういったことは口で言うのは簡単ですが、実際に形にするのは非常に難しいことだよね。 ■ 2つのゴルフ場のオーナー 自身の“劇場”をつくり、岩手のそして日本のゴルフ界を盛り上げる岩手県を拠点に不動産・賃貸ビル、アパレル卸売業、インドアゴルフ、リラクゼーション、など幅広い事業を手掛けている金谷氏。ゴルフ事業では、岩手県にある栗駒ゴルフ倶楽部、きたかみカントリークラブを経営している。「自分の劇場をつくれば、やりたいことができる」という信念のもと、練習場も購入しゴルフのスポーツ少年団も設立。きたかみCCでは岩手県オープンも開催した。【深】:岩手に帰り、1つ1つ積み上げていった。ゴルフ場を自分で買って、そこで試合をやって。僕が驚いたのは、これだけのコースコンディションを整えていること。お金儲けではなくて、ちゃんと戦えるフィールドを作っている。プロゴルファーであり経営者であるから、このバランスを取りながらやるのはすごく大変なこと。最初から考えると、大きな変貌だよね?【金】:最初は、いろいろなところで分からないところも多くて1つ1つ調べて勉強していきました。【深】:ね。最初は地面が硬すぎたり。お金や時間があればよくなるとは思うけど、そう簡単にできるものではない。それをここまでやるのはすごいことだと思う。コースを子どもたちにも開放して、環境を作ってくれている。普通だったら、お金を取りたいとか、コースを作るためにいろいろやる時間に充てたいという気持ちが出ても不思議ではないのに。【金】:まだ、僕がこのコース(きたかみCC)を所有していないとき、八幡平カントリークラブで岩手県オープンを開催したことがありました。日曜日の午後1時、2時からコースを無料で回らせてもらうのですが、子どもたちには、必ず目土をしてコースをメンテナンスする条件に、その環境を作ることができました。自分も選手をやるなかで、やっぱりコースを回りたいという気持ちはすごく強かったので。【深】:そういう小さな積み重ね、努力というのが、例えば蓮(岩手出身の米澤蓮プロ)が出てきたり。スポーツに対する理解度や認知度が上がることにもつながるよね。【金】:そうですね。ゴールが無いから挑戦し続けられるので、協賛やスポンサーになってもらうため、大会の存続価値を理解してもらい続けていきたいですね。そしてこのような大会が全国に広がってくれればいいです。【深】:よく頑張ってるし、それを、みんなが分かってくれている。だから気持ちよく(岩手県オープンに)プロが来るんだよね。美味しいものを食べたい、金谷の顔が見たい、そして子どもたちのためにも、岩手県で何かやりたいという思いで。いい年齢になってくると、何か役に立ちたいとか、次の時代に繋げたいっていう思いも強くなるんだよね。【金】:ゴルフはジュニア時代からやってきて、アメリカのミニツアーやオーストラリアでのプロテスト、アジアサーキットを経験しています。人は匂いに寄ってきますが、僕は多くの場所でその匂いをかいできたので、どうすればゴルファーを1人でも多く増やせるかという考えもあります。これからも、未来のゴルファーを増やせるように努めていきたいです。 ◇今回の岩手県オープンには、約1500人のギャラリーが来場した。スタートホールには大勢の観客が集まり、なかには数人の選手に向けて“応援うちわ”を用意するファンの姿もあった。大会に初出場した国内男子ツアー通算5勝の稲森佑貴が登場すると、ファンも大喜び。スタート時には「曲げないで!」「頑張って!」などの声援が飛び交った。稲森は「オープン競技でここまでギャラリーが入るのは見たことない」と、その光景に目を丸くする。コース内はロープの設置がないため、選手とギャラリーの距離も近い。岩手のゴルフを盛り上げるだけではなく「日本のゴルフ界を盛り上げる」「アマチュアゴルファーを増やす」。金谷氏が掲げる挑戦は、選手だけでなく、会場に足を運んだ多くのゴルファーやファンにも届いている。■金谷嶺孝(かなや・みねたか)1969年12月23日生まれ。岩手県を拠点に5つの会社を経営し、不動産・賃貸ビル、インドアゴルフ、リラクゼーション、衣料卸など幅広い事業を手掛ける。ゴルフ事業にも深く携わり、株式会社栗駒ゴルフ倶楽部、きたかみカントリークラブなどを運営。日本プロゴルフ協会理事、トーナメントプロとしても活動し、ゴルフ界の発展にも尽力している。