どんなに深いラフでも、芝があるため、ボールの下の地面からは浮いているという
2024年限りでツアーから撤退した上田桃子や、2025年のプロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花らが所属する「チーム辻村」。そのチームを率いるプロコーチ・辻村明志に、夏ラフの攻略法についてじっくり話を聞いた。
ラフではフェースをどれくらい開く? 写真で納得!
◇ ◇ ◇今回は、夏場のラフの対処法について書きたいと思います。対処法というより、多くのゴルファーにとっては知らない事実、あるいは誤解と言い換えてもいいかもしれません。まず、そのひとつが「ラフから打ったボールは曲がりにくい」ということです。例外なく、ラフからのショットはフェースとボールの間に芝が絡みます。それはフェース面の溝の機能が働かないということであり、ラフの状態によって程度の差はありますが、スピンコントロールが利きにくいということにほかなりません。その代表的な現象がフライヤーです。バックスピンがかからないためナックル性のボールになり、また落ちてもランが出ます。そのためヘッドスピードのあるプロの場合、通常のショットより距離が出て、その距離の予測が難しくなります。もっとも、アマチュアの場合、思ったより距離が出ることは少ないですが、距離の予測が難しいのは同じです。曲がりにくいのも同じ理由で、サイドスピンがかかりにくいためです。インパクトでフェース面とボールの間に芝が挟まることを想像してみてください。振った方向に、芝と一緒にボールは飛んでいきます。次の誤解は、ラフに負けないよう力任せに振る意識です。実際、トップアマでない限り、ほとんどのアマチュアは力任せに打とうとしています。もちろん、普通のショットよりもラフの抵抗が大きいことは確かでしょう。全英オープンの背の高さほどもあるフェスキュー芝ならまだしも、ボールが3分の1以上見えている状況では、必要以上に力は要りません。芝を刈るのに、斧や鉈が必要でしょうか? 必要なのは鋭利な鎌です。自分が仕事をするのではありません。クラブに仕事をさせるのが、夏のラフ攻略のポイントです。最後に、ラフでのショットで多くのアマチュアが知らないのが、「ラフのボールは浮いている」という事実です。どんなに深いラフでも、芝があるのですから、ボールの下の地面からは浮いています。そのため、多くのアマチュアはフェースの上側で打っているケースがほとんどです。ラフに負けまいと上から打ち込めば、さらにフェースの上っ面に当たります。そうなるとフェースに絡む芝の量は増え、ラフの抵抗は大きくなり、想像以上に飛びません。多くのアマチュアがやりがちな「ラフからラフへ」の連続ミスは、そうした打点のズレが大きいことを覚えておきましょう。さて、これまで指摘した3つの誤解を前提に、夏ラフの対処法についてです。まず構えたら、フェースをある程度開きます。ラフではネックに芝が絡まり、フェースが閉じるので、フェースを開く必要があります。いくらフェースを開いても、フェースとボールの間には芝がありますから、ボールは右へは飛びません。多くのアマチュアがバンカーショットに苦手意識を持つのは、フェースを大きく開けないからです。ラフからのショットも同じで、ボールが右に飛ばないと分かれば、フェースを開くことができるでしょう。そのぶん距離は落ちますから、番手を一つ上げるなどの微調整も必要です。もうひとつ挙げるなら、余計なことをせずにストレートか、ややカットで振り抜くことです。それでストレート弾道を打てたらOK。ラフでドローを打つ人に上手い人はいません。これはボクのイメージですが、フェースのリーディングエッジで芝を切る感じで振っています。鋭利な鎌にでもなったかのような効果があります。ラフの見極めは大事ですが、チェックポイントは深さ、長さ、密集具合、順目か逆目かという芝の流れでしょう。しかし、そのチェック方法はそれほど難しいことではありません。同じライのところで素振りをして、芝の先端側を刈り取れるクラブを探せばいいのです。芝ごと刈り取るのではなく、芝の先端側を刈り取ることで、打点もフェース面の下側になります。練習場では、ティアップしたボールを打つのが非常に効果的な練習です。また、正確に打てる構えを作ることも忘れずに。うまく打てばフライヤーもあって、距離が出てしまうのがラフからのショットです。そこで、確実にミートできて、飛ばない構えを作ること。確実に当たるよう短く持ち、低く構える。丹田に意識を持って、体幹を使って振ってみましょう。■辻村明志1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも指導。2025年は千田萌花、藤本愛菜をプロテスト合格へ導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフ指導に取り入れている。元ビルコート所属。※『アルバトロス・ビュー』941号より抜粋し、加筆・修正しています