山下美夢有が史上11人目のメジャー3冠を成し遂げた(撮影:福田文平)
<ソニー 日本女子プロゴルフ選手権 最終日◇13日◇片山津ゴルフ倶楽部 白山コース(石川県)◇6755ヤード・パー72>勝つべくして勝った。山下美夢有は強かった。トータル9アンダーで並んだ吉澤柚月とのプレーオフ。ティショットをフェアウェイに運び、残り186ヤードの2打目は4番ユーティリティでグリーンをキャッチした。ピン奥6メートルの十分にバーディを狙える位置。ブレーク中の22歳はグリーンに乗せるまで4打を要した。勝負ありだった。
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タップインのウィニングパット。ようやく笑顔になった。ほとんど表情を変えないラウンド中の戦闘モードをオフにした。日本ツアーは2024年「大王製紙エリエールレディス」以来、2年ぶり14度目の優勝。18番パー4でのプレーオフを1ホール目で制し、見慣れた光景が再現された。「いつも通りにプレーしました。メジャーだからといって力むことなく、淡々とプレーしました。メジャーは特別な試合。普段の試合も大事だけど、より気持ちは入る。このタイトルは獲りたかったし、優勝できて本当にうれしい」世界のYAMASHITAが初めて女子プロ日本一となった。国内メジャーは、22年の「ワールドレディスサロンパスカップ」と22、23年の「JLPGAツアー選手権リコーカップ」に続く4勝目だが、初の日本タイトル奪取で1988年のツアー制度施行前も含め、史上11人目となるメジャー3冠を達成した。今季初出場の日本ツアーだった。昨年から主戦場を米ツアーに移し、その年に「AIG女子オープン」(全英)に勝ち、海外でもメジャータイトルを手にした。今季も既に2勝。世界ランキングは日本選手では最上位の6位。優勝候補の筆頭は4日間、72ホールをボギー6個に抑え、深いラフで“武装”した北陸屈指の名門コースも力と技でねじ伏せた。片山津でのメジャー開催は08年の選手権と15年の「日本女子オープン」に続いて3度目となる。優勝スコアは08年が5アンダーで、15年が2アンダー。トータルアンダーパーの選手は2度とも3人しかいなかった。今回は雨の影響でグリーンがやわらかくなった影響などで、アンダーパーは28人に増えたが、4日間の平均ストロークは73.5516とメジャー仕様の難しさは変わらず、多くの選手から嘆き節が漏れた。「ラフからは1度もパーオンできなかった。ラフに入れると本当に難しかった。ボールは沈んでいるし、全然飛ばない。距離も長いけど、ウッドとかではグリーンを狙うことはできなかったですね」4日間のパーオン率は73.6%(53/72)だが、グリーンに乗せたのは、すべて69.6%(39/56)のキープ率だったフェアウェイからのショット。「ホント、ラフから一度も乗っていないんです」。今大会に出場した選手が誰もが「一番大事なこと」と口にしていたフェアウェイキープ率は31位。それでも、ピンチを回避し、傷は最小限に抑えた。普段通りに淡々とプレーしたという。一方で、優勝したい気持ちも強くあった。相反する思いはティオフを境に自然と切り替わる。「プレーに入ったらほかのことはあまり考えない。勝つためにやるべきことを考えるだけ」。自然と身につけたセルフコントロールも世界のトップクラスに成長した大きな力となっている。難しいコースセッティングにも、ひるむどころかワクワクする。「やっていて本当に楽しい。どうやったらバーディが取れるのかとか、いろいろ考えることが多くなってくる。そういうセッティングが増えたらゴルフが楽しくなりますね」。最強のメンタル。山下の強さの根源にあるものは、この言葉に凝縮されているといっていいだろう。国内女子では誰も成し遂げていないメジャー4冠に王手をかけた。「その辺は特に考えていない」と受け流したが、いずれ挑戦するときが来るはずだ。残る1冠の日本女子オープンはアマチュア時代を含めて6度の出場で、22年と24年の3位が最高。ゴルフのために努力と練習を惜しまない“小さな巨人”が、目の前にあるグランドスラムという大きな目標を無視するはずはない。(文・臼杵孝志)