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刈り高18mmのFW芝に戸惑いながらメジャー3冠 山下美夢有の“すごさ”は背景を知るとより分かる【現地記者コラム】 

2026/09/15 14:02

山下美夢有のすごさを実感した1週間(撮影:福田文平)

国内メジャーの今季第2戦「ソニー 日本女子プロゴルフ選手権」は、主戦場の米ツアーからスポット参戦した山下美夢有が大会初優勝を果たした。優勝スコアはトータル9アンダーだった。今年の女子プロ日本一を決める舞台となった片山津ゴルフ倶楽部 白山コースでのツアー開催は、2008年「日本女子プロゴルフ選手権」、15年「日本女子オープン」以来3度目だが、過去2回の優勝スコアはそれぞれ5アンダー、2アンダー。アンダーパーの選手はいずれも3人だったが、今回は優勝スコアも伸び、トータルアンダーパーも28人と大幅に増えた。 【写真】山下美夢有はフェアウェイからでもあまりターフを取らない 4日間の平均ストロークも08年は「75.77」、15年は「75.58」だったのに対し、今回は「73.55」と易しくなっている。その要因の一つは、雨の影響などでやわらかくなったグリーンにある。ファームネスメーターは初日「377」、2日目「419」、3日目「378」、最終日「354」だった。数値が高いほどグリーンがやわらかいことを示すが、昨シーズンから新たに導入されたグリーン硬度計測方法で数値が「400」を超えた試合はこれまで3試合しかなく、7月「大東建託・いい部屋ネットレディス」最終日以来だった。大東建託はプロ2年目の加藤麗奈がトータル22アンダーで制した。「グリーンは止まるから、ピンをデッドに狙っていける」がグリーンがやわらかい試合での選手の異口同音のコメント。つまりバーディ合戦になる。だが、過去2度のメジャー大会に比べると難易度は低くなったとはいえ、今回の選手権はそうはならなかった。うねったフェアウェイ、グリーンは砲台で傾斜も強い。そのグリーンを取り囲む深いバンカー…。コース自体の高いポテンシャルに加え、メジャーならではの深いラフが多くの選手を悩ませた。そして、見逃せないのがフェアウェイの芝だ。コーライ芝の改良品種であるビクトール芝の刈り高は18ミリで、通常よりも長く設定されていた。08年の選手権のときは13ミリだったから5ミリ長い。これがスコアメイクに影響した。特に米ツアーから参戦した選手を戸惑わせた。大会前の会見で山下は「ちょっと(ボールが)浮く分、いつもより飛ぶかなと…。距離を合わせるのが難しい」と警戒し、カットラインに一打届かず予選落ちした原英莉花は「場所によってはラフから打っている感じがする」と話した。具体的に分かりやすく“解説”してくれたのは、米ツアー10年目の畑岡奈紗だった。「入り方によってはフライヤーになってしまうときもあるし、逆にいつものように打ち込んでいくと、アイアンの(ヘッドの)上のほうに当たって距離が出なかったり、左に飛んでいくこともあった。ティアップしたボールをアイアンでクリーンに打つ練習もしたけど、コースでは自分が沈んでしまうのでアップライトに構えている感じ。地面もうまく押せないので、返ってくる感じが遅くなって、タイミングがずれることもありました」。ボールが沈む洋芝に慣れている米ツアー勢ならではの悩み。畑岡はアジア枠で出場した、20年「全米女子オープン」覇者のキム・アリム(韓国)に“悩み相談”を受けていたともいう。コースのある石川県は大会の2週間前に記録的な大雨に見舞われ、その後も雨が降り、開幕前日のプロアマも雨で中止になった。だが、夏場は猛暑でほとんど雨が降らず、コースセッティング担当の山崎千佳代プロによると「芝はかなりダメージを受けて、刈り込むことができなかった。無理をすればビクトールの特性上、軸刈りになってダメになってしまう状態だった」という。グリーンも同様で、暑さから芝を守るために硬くすることはできなかった。グリーンのやわらかさ、フェアウェイの刈り高も決して最初から意図されたものではなかった。優勝した山下を筆頭に、米ツアー組は7位タイまでの上位9人に5人が入った。山下は初日13位から、3位の竹田麗央は初日21位からの巻き返しだった。結果的に米ツアー組がコースに日に日にアジャストし、実力を示したことになる。山下は竹田、桑木志帆と並んでパーオン率1位(73.6%)だった。ミリ単位の違いを感じ取って、片山津を攻略して国内メジャー3冠を達成した。ツアー通算8勝の山崎プロの「優勝は10アンダーを5人前後が争う展開」という予想が、ほぼ完ぺきに的中した今年の選手権。少し前まで毎日のように取材し、常に原稿の対象になっていた選手たちが、久しぶりに集った試合会場のピリッと締まった空気は実に心地よかった。見る者にも伝わってきた緊張感。40年以上もゴルフをやって100切りが精いっぱいの自分にミリ単位の違いなど分かるはずもないが、ゴルフはやっぱりおもしろい。(文・臼杵孝志)