スタンス中央に3つのボールを並べて素振りをする
2024年限りでツアーから撤退した上田桃子や、2025年のプロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花らが所属する「チーム辻村」。そのチームを率いるプロコーチ・辻村明志氏に、リズムよく振れるようになるためのドリルについて、じっくり話を聞いた。
【連続写真】スタンス中央にボールを3つ置いて左足、右足、真ん中と重心移動するドリル
◇ ◇ ◇スイングのチェックや調整は、コーチにとっても重要な仕事です。選手自身も、バックスイングはどこに上がっているか、ダウンでどう下りているのか……は、とても気になるものです。練習場では鏡とにらめっこし、スマホを覗き込んでは撮影した動画をチェックしているゴルファーの姿をよく見かけます。自分のスイングは、自分では見られません。それだけに、こうした方法はとてもいい練習です。ボクもそれを否定はしません。ただ、こうしたチェック法を取り入れた場合、注意してほしいのが、形ばかりに目を奪われてしまうこと。つまり、形を気にするあまり、スイングの本質を失ってしまうのです。結論を急げば、それはリズムです。一流選手であっても、不調になると狂ったり、乱れたり、時に見失ってしまうのがリズムなのです。鏡に映しても、動画で撮影しても、リズムは目には見えません。その見えないところを意識しない限り、このスイングチェック法の効果は薄いとボクは考えています。なぜなら、一流選手であっても、不調に陥る多くの原因は、自分のリズムを見失ってしまうことだからです。打ち急ぎ、浅く速い切り返し、手元とクラブがプレーンを外れることも、突き詰めれば共通する原因はリズムの乱れです。アマチュアの場合は、そもそも自分本来のリズムが分かっていない、確立できていない人がほとんどです。ゴルフには再現性の高さが求められますが、そこに求められるのが、毎回同じリズムで打てるかどうかでしょう。まずは自分のリズムを身に付けることこそ、ゴルフ上達の第一歩だと考えても間違いありません。アマチュアに多い手打ちは、リズムがなく、一定でもないから起きる現象です。これは、手だけではなかなかリズムは生まれないことを示しています。体全体を使えていない、特に下半身を使えていないからリズムが生まれず、手上げ、手打ちになっているのです。リズムを崩したチームの選手たちにやらせている練習をお伝えします。やり方は簡単で、スタンス中央に3つのボールを並べます。真ん中のボールの手前にヘッドを置いてアドレスします。この状態で素振りをするわけですが、ここで下半身を動かします。まず、バックスイングのきっかけは、左側のボール側を見て左足を踏み込むこと。次に右足で踏み込むことで、バックスイングとなります。そしてダウンスイングでインパクトを迎えますが、このとき、エネルギーは真ん中のボールに集まっていきます。最初は大げさに体重移動してみましょう。練習ですし、実際にボールは打ちませんから、多少、体が大きく左右に揺れても構いません。大きく揺れた方がリズムは取りやすいと思います。そこで心地良いリズムを感じられるようになったら、目に見える体の動きを小さくしていきます。といっても、体を動かさないわけではありません。体重というより「重心」を、3つのボールを目安にして左足、右足、そして中心に向かうように移動させます。目に見えない動きであっても、一流選手はこの動き、つまりリズムを持っています。具体的には、左足はフォワードプレス、右足はバックスイング、そこから中央に向かうのはダウンスイングからインパクト、そしてさらに左足へはフォローということになるでしょうか。ボクの友人のひとりに、北海道日本ハムファイターズのピッチングコーチを務める武田久さんがいます。競技は違いますが、ともにアスリートとして、いろいろな意見を交換してきました。その中で、ゴルフにも野球にも共通する現象、イップスについて話し合ったことがありました。多くの場合、イップスはメンタルの問題として語られてきました。もちろん、そうした原因も大きいでしょう。しかし、体の動きから見ると、特に下半身が動いていないことが共通しています。つまり、これまで見てきたように、リズムが喪失している現象とは考えられないでしょうか?そして現在、ピッチングコーチになった武田さんが、スランプの予兆がある選手にやらせる練習が、歩きながらのピッチングだそうです。その理由はいったって明快で、「歩きながら投げればイップスにはならない」からです。ボールを3つ並べるドリルは、これと同じ理屈です。それでもリズムが作れないという人は、左足を大きく上げ、次に踏み込んでクラブを振り上げてみましょう。これを連続でやれば、勝手にリズムは作れます。その動きを小さくしていったものが、あなた独自のスイングリズムです。■辻村明志つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも指導。2025年は千田萌花、藤本愛菜をプロテスト合格へ導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフ指導に取り入れている。元ビルコート所属。※『アルバトロス・ビュー』945号より抜粋し、加筆・修正しています