相棒のマーク・ウォリントン氏と抱き合う岩井明愛(撮影:佐々木啓)
<スタンレーレディスホンダ 最終日◇11日◇東名カントリークラブ(静岡県)◇6530ヤード・パー72>最後は3メートルのバーディパットをねじ込むと、ギャラリーからの大きな拍手と歓声を全身で受け止めた。両手をあげてド派手なガッツポーズ。それと同時に、感極まって涙が流れてきた。「キャディのマーク(マーク・ウォリントン氏)と優勝できたのが本当にうれしい。勝てそうで勝てない試合も多かったので」。日米通算8勝目は、本人にとっても印象的な1勝になった。
【写真】エビアンの惜敗で大粒の涙を流す岩井明愛
「自分に打ち克てないことが多かった」と最近の戦いぶりを振り返る。真っ先に思い浮かぶのが、今年7月に3位と惜敗した「アムンディ・エビアン選手権」だった。最終ホールで決めればプレーオフという2.5メートルのバーディパットを外し、優勝争いから脱落。ウォリントン氏に肩を抱かれ、グリーンを降りると悔し涙が止まらなくなった試合だ。「プレッシャーを感じていましたね」。目の前にメジャータイトルが迫っているのだから、当然のことかもしれない。エビアンの最終日は、前半の3番でダブルボギーを叩き、一度は首位との差が5打まで広がったものの、そこからいくつも絶妙な距離のパットを沈めて、再び優勝戦線に飛び込んだラウンドだった。それだけに、最後“あと一打”手が届かなかったのが悔しかった。ただ、そこから考え方が変わった。「勝てそうで勝てない試合があると、何か足りなかったのかなと思うけど、最近はポジティブに考えようと思っています。ミスショットをしても堂々と歩いていればいいことがあるんじゃないか、とか。小さなことでもポジティブに」。1打差の単独首位から出た最後のラウンドは、その効果を感じる内容でもあった。その象徴が14番での3パットのボギー。この時、岩井自身は状況を把握していなかったが、連覇に燃え猛追していた河本結に並ばれていた。ただ、15番で2打目を1.5メートルにつけるショットを放ちバウンスバックを決め、再び単独首位に躍り出た。順位状況も分からない優勝争い終盤でのボギーは、焦りなどを誘発するかもしれない。しかし岩井は、「何も考えていなかった」とあっけらかんと振り返る。それは「目標が(トータル)20アンダーだったので、それに向かってコツコツやろうと思ってました」ということに集中していたから。そのスコアには届かなかったが、一喜一憂する姿はそこにはなかった。2022年3月に大会の冠スポンサーを務めるホンダと所属契約を結んだ。そこから今年で5度目の出場だが、これまでは23年の10位が最高位でなかなか優勝争いには食い込めなかった。「これまでは悔しさとか、焦りとか、あと少し不安もありました」。ホンダの看板を背負い「プレッシャーもあった」とも言うが、その重圧にも打ち克つ大会になった。優勝副賞としてホンダ車の『ZR-V e:HEV Z』が贈られるが、それも楽しみ。「友達と海に行きたい。(出身地の)埼玉に海はないんですけど」と笑う。昨年8月の「ザ・ポートランドクラシック」では米ツアー初優勝を果たしたが、日本ツアーでの勝利は2024年9月の「住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」以来2年ぶり。この間は米国に主戦場を移すなど、大きな転換期でもあった。来週から米ツアーはアジアシリーズに突入。初戦の「ビュイックLPGA上海」(15~18日)はスキップするが、韓国、マレーシア、そして日本と再び主戦場での転戦が続く。「日本の選手のレベルの高さを感じるなかで勝てたのはうれしい。この自信をアジアシリーズにもぶつけたい」。視線はやはり前向きだ。(文・間宮輝憲)