代表取締役の三浦信栄氏(左)と代表取締役の佐々木政浩氏(撮影:ALBA)
株式会社三浦技研と株式会社ササキがパートナーシップ契約を締結した。精密な削り(グラインド)技術を強みとする三浦技研と、鍛造からCNC加工、組み立てまでを国内で一貫して手掛けるササキ。異なる強みを持つ両社は、なぜ手を組むことになったのか。
【写真】三浦技研×ササキが生んだレフティモデル 2機種を構えた顔を比較
代表取締役の三浦信栄氏は「鍛造に困っていた。自社の力だけでは足りない」という課題があったと話す。2021年の「ジャパンゴルフフェア」終了後、三浦氏はササキの本社がある栃木県鹿沼市へ足を運んだ。競合他社だけに断られることも覚悟していたが、代表取締役の佐々木政浩氏から返ってきたのは「何をしましょう?」という前向きな言葉だった。そこから両社の関係が始まる。お互いの技術力を確かめるため、アイアンやウェッジをテストケースとして製品化。その第一弾として誕生したのが今回発売されるレフティモデル『900シリーズ』だ。なぜ、レフティモデルだったのか。レフティユーザーは市場規模が小さく、右利きの職人がレフティモデルを仕上げるには通常の2~3倍の研磨時間を要する。そうしたハードルがあり、三浦技研は20年以上更新できていなかった。しかし、ササキの製造技術と三浦技研の研磨技術を融合させることでこれを乗り越えた。鍛造とCNC加工はササキ、仕上げの研磨は三浦技研。一つのヘッドには、それぞれの技術が受け継がれている。まずササキが棒状の軟鉄(S20C)を1,600トンプレスで鍛造し、ヘッドのベースを成形。その後、表面加工やバックフェースの切削、彫刻加工を施し、品質検査を経て三浦技研へ引き継がれる。荒研磨やバフ研磨など、職人の手によって仕上げられる。こうして誕生した『900シリーズ』には、『LT-900』と『LC-900』の2モデルがラインナップされる。アスリート向けの『LT-900』は、小ぶりでシャープなヘッドが特徴。マッスルバックに迫る打感を追求し、インパクトエリア後方に十分な肉厚を確保することで、芯のある分厚い打感を実現した。安心感のあるトップブレードからヒールへと流れる美しいフォルムも魅力で、力強さを感じさせるヘッド形状に仕上げられている。さらに、キャビティ部はソール側へ重量を配分した低重心設計を採用。ミドルアイアンでも高弾道を打ちやすく、小ぶりなヘッドならではの高い操作性も兼ね備えている。一方の『LC-900』は、幅広いゴルファーに向けた寛容性の高いモデルだ。インパクトエリア後方のキャビティをV字形状とし、トゥ・ヒール側へ重量を配分することで、左右の打点ブレに強い設計としている。さらに、ヘッド重量の約60%をソール側に集中させた低重心設計により、高弾道と風に負けない力強い弾道を両立。20.3mmのワイドソールは入射時のミスにも寛容で、キャンバーソールによる抜けの良さも追求した。適度なオフセットやヒールのボリューム、美しい面のつながりなど、三浦技研らしい端正なヘッド形状も特徴だ。レフティモデルという長年の課題を克服して生まれた『900シリーズ』。競合という立場を超え、日本のものづくりを支え続ける両社の技術が融合した、モデルと言えそうだ。