優勝副賞のミニホイールローダを獲得した吉田鈴。その使い道は?(撮影:上山敬太)
<CAT Ladies 最終日◇23日◇大箱根カントリークラブ(神奈川県)◇6657ヤード・パー72>吉田鈴は2勝目を決める30センチのバーディパットをカップに流し込むと、両手をあげて、満面の笑みを浮かべた。「定番みたいになってるのでやっています」。優勝した瞬間のポーズについては、ちょっぴり“サービス精神”も。6月の「ヨネックスレディス」の時と同じように、涙は一切ないクライマックスだった。
【写真】最後は「定番」の両手ガッツポーズ
佐久間朱莉と並ぶ首位で2日目を終え、自身2度目となる最終日最終組で臨んだ最後の18ホールだが、序盤から足踏みが続いた。インは距離も長く、難度も増す。そのため伸ばしたいアウトコースだったが、そこでバーディが奪えない。ハーフターン時点でトップの座は譲り、2打差の6位グループにいた。だが、そんな状況でも冷静なのが、この22歳の強み。「トップを走ってる人は硬くなったり、体が反応するのは私も分かっている。上が落とすかもしれない。パターを1つ、2つ決めれば、プレーオフには持ち込めると思ってました」。そしてサンデーバックナインで、この考えが間違いではなかったことを証明する。10番、12番でともに3メートルのバーディパットを決めトップに並ぶ。そして団子状態が続くなか迎えたのが、3日間を通じて最難関ホールとなった16番パー4だった。この日のピン位置は中央奥だったが、カップの右奥が下り傾斜になっており、何人もの選手がそれに泣かされた“激ピン”でもあった。実際に吉田も「あそこがキーホールだった」と振り返る。だが、残り151ヤードから7番アイアンで放った2打目は「右手前に寄せよう」という考えとは逆の左方向に出てしまう。左手前からピンまでは12メートル。「外れたら2~3メートルはオーバーしていたと思う」という痺れるパットを残してしまった。だが、2パットでいいと考えて打った3打目が、そのままカップに決まる。結果的にこれが“決勝パット”になり、最後は後続に2打差をつけるトータル13アンダーで歓喜の瞬間を迎えた。初優勝したヨネックスレディスは、同週に「全米女子オープン」が行われており、主力選手の多くが不在の大会での優勝だった。しかし、今回は今年の「AIG女子オープン」(全英)覇者で、現在メルセデス・ランキング1位に立つ桑木志帆らとの争いを制して手にした勝利だ。「きちんとみんながいる大会で勝てたのは自信になりますね」と、その声も弾む。常に比較され、「尊敬している」と話す姉・優利の通算4勝に一歩近づく2勝目でもあった。「あまり公にはしてない」と言うが、その背中を追ってアメリカでプレーしたいという気持ちも胸に秘めている。今後、求めていく課題について聞かれた時には「飛距離ですね。アメリカに行ったら全然レベルが違う」という本音もこぼれてきた。そのために、自分で考えながらメニューを組むトレーニングにも汗を流している。この大会では“お約束”となっている、優勝副賞の重機(今年はミニホイールローダ)の活用法について聞かれると、「まったく考えてなくて」と、まずは苦笑い。だが続けて、「自分で使うことはないので、恩返しに使いたいですね」と言ってニコリ。寄付などを通じて、どこかで誰かのために働くことになりそうだ。混戦のなか、思うように伸ばせなくても焦りを感じさせないクールな戦いぶりは多くの人たちの印象に残った。「次はメジャーでどれくらい自分のリズムを試せるか。春先から落ちている体力や鈍っている部分を回復させたい。秋口は大事な試合がつまっている。最後まで気を抜かないように」。3週後には、まず「ソニー 日本女子プロ選手権」(9月10~13日、片山津GC白山C/石川県)が待っている。ここでも勝利を重ね、メジャー1勝(2023年ワールドレディスサロンパスカップ)を誇る姉にまた一歩近づきたい。(文・間宮輝憲)