ゴルフパートナー

藤本佳則、4勝目につなげた「1本半」の意識 下部ツアー時代の葛藤も明かす

2026/10/26 07:01

今季2勝目を果たした藤本佳則(撮影:ALBA)

<フォーティネット プレーヤーズ カップ 最終日◇25日◇成田ヒルズカントリークラブ(千葉県)◇7105ヤード・パー71>1打リードの単独首位で最終日を迎えた藤本佳則が、5バーディ・ボギーなしの「66」をマーク。2位に4打差をつけるトータル15アンダーで逃げ切り、今季2勝目、ツアー通算4勝目を飾った。初日から首位を守り抜く完全優勝。その裏には、結果だけでは見えてこない奮闘があった。 【写真】サプライズケーキ登場で笑顔の藤本 初日に「66」、2日目に「68」、3日目に「69」、そして最終日も「66」。4日間すべて60台を並べたが、実は「きのうまでショットが当たらなかった」と明かす。それでも、「勝ちに行くという気持ちはあったので、そのおかげでショットが当たってくれたのかもしれません」と振り返った。さらに、3日目のラウンド後の練習でひらめきがあった。「これならハマるんちゃうんかな」と感じた修正を、最終日の朝も確認。「半分賭けでしたけど、朝打ったら意外といいじゃん、いい勝負できるんちゃうかな」と手応えをつかみ、スタートを迎えた。その“賭け”とは、ダウンスイングでクラブを下ろす軌道の変更だった。「シャフト1本半ぐらい変えている」という修正。「選手からすると大きな変更ですけど、映像みたら分からないと思うので、感覚の話です。風が強いなかでは大きな賭けでした」と説明する。プロならではの繊細な感覚を頼りに、これまでよりシャフト幅1本半ほどインサイドからクラブを下ろすことを意識した。その効果は序盤から表れた。1番は135ヤードからPWで5メートルにつけてバーディ。2番パー5ではアプローチを1メートルに寄せ、3番は90ヤードから3メートル、4番は4番アイアンでカップそばにつけた。出だしから4連続バーディを奪うと、8番でも3番アイアンで5メートルにつけるなど、ショットとパッティングがかみ合い、スコアを伸ばした。後半は風速7~9m/sにもなる強風が吹きつけた。前半のようにバーディを重ねる展開にはならなかったが、そこも想定内だった。「あれだけ風が吹くとバーディが難しいと思っていたので、僕自身はパーを消化していくつもりでした」。無理に攻めず、パーを積み重ねてリードを守った。強風のなかでもフェアウェイを外したのは14ホール中4ホールにとどめ、ボギーなしで逃げ切った。優勝争いのさなかに、前日ひらめいた修正を実践した藤本。その姿勢について、自身はこう分析する。「勝負事で、勝たなあかんということも大事ですけど、なにかいいことを見つけることを優勝争いのなかでもやってしまうのが、自分の良いところでもあり、悪いところでもあると思います」勝つために目の前のプレーに集中しながら、新たな可能性も探る。その姿勢が結果へつながり、“賭け”に見事に勝った。 今年5月の「関西オープン」では、13年ぶりとなるツアー通算3勝目を挙げた。それからわずか5カ月で4勝目。2011年のプロ転向以来、年間2勝は初めてだ。「感慨深い」と口にしながら、「3勝目するのに12年以上かかったのに、すぐ5カ月で優勝するのは、なんなんでしょうね…」と振り返った。プロ1年目に初優勝を飾り、2019年までシードを維持。しかし、2020-21年シーズンには獲得賞金0円という苦い経験も味わった。その後は下部ツアーを主戦場に戦ってきた。「僕にとって、それはいい経験。一人で考える力というのは、昔より今のほうがついていると思う。ダメになってACN(下部ツアー)に行ったことは自分には生きていると思います」そう前向きに振り返る一方で、当時は葛藤もあった。「デビューして何年かレギュラーにいて、そこから下に行くということを受け入れられない自分もいました。認めるのに数年はかかりましたね」。環境の変化をすぐには受け入れられなかった。それでも、下部ツアーで戦う選手たちのレベルの高さを肌で感じ、思うように勝てない経験も重ねた。その苦闘も、今となっては成長の糧になっている。経験を積み、年齢を重ねたことで、プレーに向き合う姿勢も変わってきた。「ある程度歳がいって、考え方が良くなっているのかもしれないです。若いときはガツガツ行っていた。それがいい面でもあり、悪い面でもあると思う。そういう意味では、状況判断というか、落ち着いて周りが見えている」。若い頃の勢いに、経験から得た冷静さが加わった。状況を見極め、必要ならば思い切った修正にも踏み切る。最終日に見せたプレーは、そんな37歳の実力者だからこそできた戦い方だったのかもしれない。(文・高木彩音)