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イ・ボミがSNSの時代に妊娠を“対面”で発表した理由【現地記者コラム】

2026/10/28 12:00

イ・ボミが大会期間中に妊娠を公表した理由とは?(撮影:福田文平)

プロアスリートたちが“大事なこと”を個人的に発信するようになったのは、サッカーの中田英寿が最初だったと記憶している。細かいことは忘れたので、調べてみると、1998年に開設された公式ウェブサイトでアスリートによる先駆的な個人メディアとあった。 【写真】お相手は俳優 ボミとウェディングドレス 知り合いのサッカー担当の記者たちがほとほと困っていたのを覚えている。対面では核心を語らないから、公式サイトをチェックする。クラブの移籍問題が起きると、さらにその頻度は増えた。現場には行かず、アスリートのSNSを拾って記事を書く、いわゆる“コタツ記事”のはしりでもある。女子ゴルフ界も当然ながらSNS全盛だ。結婚・出産などのプライベート情報はほぼ100%、個人のSNSから発信される。以前はマネジメント会社から出ていたリリースも、今ではスポンサー契約の発表くらいになった。たまにプライベートな情報をキャッチしても、「SNSで発表するまで書かないで」とお願いされる。記者泣かせともいえる時代になった。桑木志帆が今季4勝目を挙げた「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」の会場で、大会アンバサダーを務める2015、16年賞金女王のイ・ボミ(韓国)が妊娠していることを発表した。出産予定は来年2月。女の子だという。夫のイワンは韓国のイケメン俳優。どちらに似ても、かわいらしい子に間違いない。当初は出産後に発表する予定だった。だが、現在妊娠6カ月で、お腹も目立つようになった時期。憶測で書かれるのは本意ではない。妊娠の事実は明らかにして、公表は出産まで控えるようにメディアに依頼する案もあったという。取材の席上での発表はボミの意向だった。大会最終日に「どうして?」と聞いてみた。「赤ちゃんが生まれてからでいいのでは、と夫は言っていました。無事に出産するまで、何があるか分からないですから。でも、お腹も大きくなったし、みなさんも気がつきますよね。一番は新しい家族ができたのは、いいことなので、報告したかった。ギャラリーの方にも、たくさん『おめでとう』と言ってもらえました。うれしかったです」。快哉(かいさい)だった。2023年に日本ツアーを引退し、24年から大会アンバサダーとして会場を訪れている。今年は3日目の決勝ラウンドからだった。身重のボミへの大会側の配慮だろうが、妊娠中の公表を避けるのならば「欠席」でもよかった。理由はなんとでもなる。でも、ボミは今年もやって来た。そして、「新しい家族ができました」と発表してくれた。今年も妊娠をSNSなどで発表した女子プロがいた。時代の流れを否定する気はない。ただ、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のトーナメント規定にある『産休・育休制度』を利用する場合は、“ちょっと待った”と言いたくなる。以前は同制度を申請した選手がいると、JLPGAからリリースが出ていたが、選手側の要望で今は一切発表されなくなった。「プライベート、個人情報、妊娠期間中のリスク…」。そういう時代だ。妊娠期間中のリスクは十分に承知している。安定期を過ぎても不測の事態は起きる。無事に出産するまで、静かに過ごしたい気持ちは理解できる。でも、SNSなどで発信する選手は多い。これには違和感しかない。シード争いの最終戦「大王製紙エリエールレディス」では、大会後にJLPGAが配布する「シード選手情報」の「トーナメント特別保障制度または産休制度適用者(シード選手)」で、トーナメント会場で見かけなくなった選手の現状を知ることになる。ただ、理由は明記されていないので、ケガなのか妊娠・出産なのかはわからない。やっぱり、これって歪だ。出産が無事に終わると、出産日から起算して36カ月を限度とした育休が認められている。せめて、育休に入った時点でJLPGAを通じて公表してはどうだろう。少なくとも“あの人は今”の状態ではなくなる。ファンも祝福し、安心できるはずだ。JLPGAも育休のスタートをプレスリリースする落としどころにしたい考えだというが、選手側との調整は芳しくないようだ。制度を利用するのは正当な「権利」だが、「権利」を行使すれば「義務」が発生する。SNSへの投稿の有無にかかわらず、2つはセットだと考えている。「義務」といっても、難しく考えることはない。ボミは「いいことだから」と自分の口で明らかにした。つまり、そういうことだ。発表は幸せの“おすそ分け”と考えればいいんじゃないかな。(文・臼杵孝志)